Glaucoma 緑内障

緑内障

緑内障
視神経がダメージを受けて、視野が徐々に狭くなる病気

緑内障とは、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経に傷害が起こり、視野(見える範囲)が狭くなる病気のことです。少しずつ見える範囲が狭くなっていき(視野障害)、治療が遅れると失明に至ることもあります。日本の中途失明の第1位の病気です。

正常な見え方

正常な見え方

ランドセルを背負った女の子と男の子が横断歩道を渡っています。

緑内障が少し進行

緑内障が少し進行

右側にいた男の子が見えていません。

緑内障がさらに進んだ状態

緑内障がさらに進んだ状態

右側の子どもたちが見えていません。左上の青い道路標識も見えていません。

しかし、その進行は非常にゆっくりですので、病気がかなり進行するまで自覚症状はほとんどないため、注意が必要です。
また、両方の目の症状が同時に進行することはまれですので、両目で見た場合は、見え方の異常は自覚できず、片目で見ることにより初めて気づくことも少なくありません。

両目で見た場合

両目では信号がしっかり見えます。

片目で見た場合

片目で見た場合、赤枠部分がかすんで見え、信号が見えません。

緑内障は中高年の方に多く、40歳以上の20人に1人、70歳以上の方の10人に1人が発症しており、その内の8割から9割の方は自分が緑内障と気づかずに過ごしいます。
知らないうちに視野障害が進行して失明することもありますので、自覚症状がない場合でも、定期的に眼科検診を受けることが大切です。

緑内障は目の圧(眼圧)が高くなることで引き起こされる

緑内障による視神経の傷害は、目の硬さを保っている目の圧(眼圧)が上がることで引き起こされます。
眼圧は毛様体でつくられる目の中の水(房水)の量によって決まります。房水は、隅角という部分から、フィルターにあたる線維柱帯を通り、排出管となるシュレム管に流れて、目の外に出ていきます。
したがって、つくられる房水の量と排出管からの流れ出る房水の量のバランス(蛇口と出口のバランス)によって、自分の眼圧は決まります。

目の圧(眼圧)

視神経がダメージを受けると視神経の乳頭陥凹が拡大する

眼圧が正常よりも高くなって、視神経がダメージを受けてしまうのが緑内障です。
視神経は、眼の奥の視神経乳頭という部位の辺縁を通っています。視神経がダメージを受けると、視神経乳頭の辺縁が狭くなるため、視神経乳頭の凹み(陥凹)が深く広がっていきます。これは緑内障の重要な眼底所見で、視神経乳頭陥凹の拡大といいます。視神経の神経節細胞が死んでいっている所見です。

辺縁、陥凹
  • 正常の人の
    生理的陥凹
  • 緑内障性陥凹
    (視神経乳頭陥凹の拡大)
生理的陥凹、緑内障性陥凹

緑内障で失った視野は元に戻せない

緑内障は現在の医学では治癒させることができない病気で、病気の進行を遅らせることが治療の基本方針となります。
緑内障は自分では気づかないうちに徐々に進行していく病気で、一度失った視野を元に戻すことはできません。
緑内障が疑われましたら、定期的な検査と治療が大切です。

緑内障は発症原因により3つに分けられる

緑内障は眼圧が上昇する原因により、次の3つに分けられます。

原発緑内障:原因不明の緑内障
原因が不明の緑内障です。「原発」とは原因不明という意味です。緑内障の多くの患者さんは原因が不明で、この原発緑内障に分類されます。

発達緑内障、先天緑内障:生まれつきの緑内障
生まれつき眼内の水の流れ出る部位(隅角や線維柱帯など)が未発達であることから起こる緑内障です。まれな病気ですが、乳幼児から小児期に発症・進行し、失明率の高い病気です。

続発緑内障:目や身体の病気、薬の副作用などにより引き起こされる緑内障
目の外傷、角膜の病気、網膜剥離、目の炎症などの目の病気や、糖尿病やアトピーなどの全身の病気が原因となって、二次的に引き起こされる緑内障、もしくはステロイド剤などの薬の副作用によって引き起こされる緑内障を続発緑内障といいます。

隅角の形による2つのタイプ分けが重要

緑内障はさらに隅角の形状より、閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障に分けられます。各タイプにより症状や治療が異なりますので、このタイプ分類はとても重要です。

原発閉塞隅角緑内障
房水の出口(隅角)がふさがって眼圧が上昇

年齢とともに水晶体は膨らんできます。そうすると、水晶体と虹彩の間の房水の流れ道が狭くなり房水の流れが悪くなります(瞳孔ブロック)。流れ出られなくなった房水は、虹彩を後面から押し上げるため、房水の流出口のある隅角が押し狭められて、房水の流れがさらに悪くなって眼圧が上昇してしまいます。これを原発閉塞隅角緑内障といいます。
最終的には隅角が完全にふさがって(隅角閉塞)、房水の流れが止まってしまうことがあります。この状態を急性緑内障発作といい、緊急事態です。
したがって、このタイプの緑内障の方は、緑内障禁忌と記載のある薬は飲めません。急性緑内障発作を起こす危険があるからです。

虹彩水晶体間(瞳孔ブロック)、隅角閉塞

急性緑内障発作を起こしたら緊急処置が必要

急激に発症し、眼圧が非常に高くなります。急激な眼痛、頭痛、充血が生じ、目がかすんできます(霧視)。
吐き気(悪心)や嘔吐も起こしますので、目の病気とは気づかずに他の診療科を受診して、眼科受診が遅れることがありますので要注意です。
症状も強く、放置すれば不可逆性の視野障害を引き起こし、失明に至ることもありますので、急性緑内障発作を起こしたら、緊急処置(レーザーまたは手術治療)が必要です。

急性緑内障発作

急性緑内障発作

隅角閉塞による浅前房
結膜は充血し、眼圧は著しく高い

隅角が狭く癒着してきている人は予防手術も

急性緑内障発作が起きても、運よく自然に解除されて、慢性に経過している人もいます。このような場合は、緊急手術をする必要はありませんが、再発作を起こさないようにするために、早急に(近日中に)手術をして、狭い隅角を広げてあげることが大切です。
隅角の狭さは人によって異なり、特に女性は狭い傾向にあります。また、年齢とともに徐々に進行していきます(さらに狭くなってきます)。
したがって、もともとこのような狭い隅角の目の構造(原発閉塞隅角症)の人では、急性緑内障発作を起こす前に予防的に手術をすることもあります。

原発開放隅角緑内障
房水の流出口にあるフィルターが目づまりして眼圧が上昇

房水の流出口である隅角は開放していて、閉塞していないのですが(開放隅角)、その流出口にあるフィルター(線維柱帯)が徐々に目づまりをして、房水のシュレム管への排出がスムーズにできないと、眼圧が上昇して緑内障になります。これを原発開放隅角緑内障といいます。

原発開放隅角緑内障

ゆっくりと進行するため自分では気づかない

もっとも多いタイプの緑内障で、ゆっくりと視野障害が進行していく慢性の病気です。
ゆっくりと進行するため、自分では気づかないうちにうちに進行していることも多く、気づいたときには既にかなり視野障害が進行していることも少なくありません。

眼圧が正常な人でも緑内障になる(正常眼圧緑内障)

一方で、近年になって原発開放隅角緑内障の患者さんの多くが、“もともと眼圧が高くない(正常眼圧)にもかかわらず緑内障を発症している”ということがわかってきました(正常眼圧緑内障)。
視神経の眼圧への抵抗力には個人差があり、他の人にとっては正常眼圧であっても、自分にとっては視神経が傷害を受けてしまう眼圧である場合があります。皆にとっての正常眼圧は、自分の目が耐えられる眼圧(自分にとっての健常眼圧)ではなく、その眼圧では自分の視神経は耐えられずに傷害されて、緑内障になってしまうということです。
つまり、個人個人によって耐えられる自分の眼圧(健常眼圧)は異なり、一般的な正常眼圧であっても、自分にとっては正常眼圧ではなく(自分が正常でいられる眼圧はもっと低い必要があり)、その眼圧では自分は緑内障になってしまうということです(正常眼圧緑内障)。

緑内障の治療
治せない病気なので、進行を遅らせる

一度傷害を受けた視神経は元には戻らない(死んだ細胞は生き返らない)ため、緑内障で失った視野を元に戻すことはできません。また、緑内障の進行を止める根治療法も残念ながらまだありません。
したがって、緑内障の治療方針は、視神経傷害の進行を遅らせることにあります。
緑内障の進行予防で、現在において効果がはっきりとしているのは眼圧を下げることだけです。眼圧を下げるためには、薬物治療(点眼薬、飲み薬)、レーザー治療、手術治療があります。

薬物治療が基本

通常、眼圧を下げる効果のある点眼薬を使います。一時的に飲み薬を併用することもあります。具体的には、房水の産生を抑える点眼薬や、房水の流出を促す点眼薬を使って、眼圧を低下させます。
眼圧が正常範囲の人でも、さらに眼圧を下げることによって、病気の進行を抑えることができます。緑内障と診断されましたら、毎日の点眼薬は忘れずに継続して使用することが大切です。

レーザー治療でもう一段眼圧を下げる

何種類もの点眼薬を使っている場合や点眼薬を使っても視野の狭窄が進行する場合には、レーザー治療を行うと、もう一段眼圧を下げる効果が期待できます。ただし、人によって効果は個人差があります。
開放隅角緑内障では、房水の排出口である線維柱帯に色素細胞などのゴミが目詰まりして排出が悪くなっているため、眼圧が上昇しています。
したがって、その排出口(線維柱帯)にレーザーを照射して、線維柱帯につまった色素細胞などを、正常細胞には影響しないように選択的に破壊します。こうして目づまりを解消して隙間を作ることにより、房水の排出を促します(選択的レーザー線維柱帯形成術:SLT)。
わかりやすく言うと、“レーザーでつまった排水溝のお掃除をして、目の中の水が排出されやすくすること”です。

SLT緑内障レーザー治療の特徴

外来で点眼麻酔を行います。レーザー照射時間は短く、約10〜15分程度で終了します。治療後すぐに通常の日常生活が可能です。
副作用が少なく、ほとんど痛みはありません。

最後は手術治療、しかし徐々に効果は減弱

レーザーでも十分な眼圧下降が得られない場合、または、早期に眼圧を下げる必要がある場合は、手術治療を行います。
最初は、目づまりしている線維柱帯の一部を取り除いて房水の流れ道を開放する手術(流出路再建術:線維柱帯切開術)を行います。
手術治療を行っても、永久に眼圧下降が得られることは困難で、数年から10年程で効果が減弱してきてしまいます。その場合は、再度、流出路再建術を行うか、目の外に房水を流す迂回路(バイパス)をつくる手術(濾過手術:線維柱帯切除術)や目の中にチューブを入れて外に房水を流す手術(チューブシャント術)を行います。

当院では、緑内障のレーザー治療も手術治療も行っております。緑内障でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
他院から紹介いただいた患者さまは、手術後に落ち着きましたら、紹介元の先生にお戻りいただきます。

緑内障は一生の病気

緑内障は治癒させられない病気で、一度発症したら一生つき合っていかなくてはならない病気です。治療を中断すると徐々に進行していって、最後は失明してしまいます。信頼できる眼科医にかかり、根気よく治療を続けていくことが大切です。
40歳を超えたら、年に1回は人間ドックや健康診断を受けましょう。一度失った視野は元には戻らないため、自覚症状が出る前に、早期に発見、早期に治療を開始することが重要です。

Page top